コラム

ドクターコラム②

 暑かった夏も終わったようで、涼しい⾵が吹くようになりました。
 夏休みは⼦どもたちにとって特別です。毎⽇⼦どもやお⺟さんに接していると、ふと⾃分の⼦どものころはどうだったかな?と思い返すことがあります。昭和の時代ですから社会的状況は今と異なりますが、⾃転⾞に乗れるようになって友達と遠くの公園で遊ぶようになったことが、特別な夏の思い出として残っています。

 周囲の証⾔によると、私はどうにも運動⾳痴な幼児でした。同年代の⼦ども集団が遊ぶのを外から眺めているような受け⾝な⼦で、喧嘩の仕⽅もわかりませんでした。厳しい保育⼠さんに、⾷べるのが遅くて怒られたことをよく覚えています。ただ本を読んだり絵を描いたりするのは得意で、褒められていたような気がします。
 5歳の夏、近所に住む叔⽗さんが、「⾃転⾞に乗れないと友達と遊べないぞ。できるようになったらこれをやる。」と私に100円⽟を⾒せて⾔い放ちました。のんびりした私は補助輪付きの⾃転⾞で何も困っていなかったのですが、突然補助輪が外されました。
怖い怖いとごねていたと思いますが、特訓の末⾃転⾞に乗れるようになりました。補助輪がないと、こんなに爽快に進むんだと感動しました。それが⾃信になったのか、友達と遊ぶことがすごく楽しいと思えるようになりました。
 100円⽟が動機付けになったかどうかわかりません。でも叔⽗さんの特訓には感謝しています。⼼折れずに頑張れたということは、根気強く励ましの⾔葉をかけてくれたのでしょう。苦⼿で回避していたことにチャレン ジし、そこで達成感を得ることで友達付き合いにも⾃信がついたことは、⾃分にとって⼤きな意味があったと思います。

 ⼦どもは⾃信を糧に⼤きくなります。どんな⼦にも得意不得意はありますが、苦⼿なことに向き合うためには、「頑張ったらできた。」「できたらいいことがあった。」という⼩さな成功体験の積み重ねが⼤切であり、周囲の⼤⼈が⼿をかけてあげたい部分だと考えています。